最高裁判所第三小法廷 昭和62年(オ)1298号 判決 1988年1月19日
福岡市南区横手四丁目七番一〇-一四〇二号
上告人
井上満國
フランス国バリ七五〇〇八、リユ・ラ・ボアシエ 三〇
(日本における営業所東京都港区南青山一丁目一番一号)
被上告人
ルイ・ヴイトン・エス・アー
右代表者社長
ジヤン・オグリアストロ
右訴訟代理人弁護士
芹田幸子
小野昌延
忠海弘一
松村信夫
吉元徹也
宮武敏夫
藤田泰弘
直江孝久
若井隆
山口三恵子
高松薰
由布節子
石坂基
右当事者間の大阪高等裁判所昭和六二年(ネ)第六七〇号損害賠償等請求事件について、同裁判所が昭和六二年七月一五日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 長島敦)
(昭和六二年(オ)第一二九八号 上告人 井上満國)
上告人の上告理由
第二審判決には、判決に影響を及ぼすこと明らかなる法令の違背があるので、破毀されるべきである。
第二審判決は、「被上告人は本件標章(一)、(二)を被上告人の商品の表面全体にわたってあたかも模様のように使用しているが、この様な使用方法は、右標章を意匠として使用しているものであって、商標として使用しているものといえないので、これを真似た上告人の行為も商標権侵害となるものではない」との上告人の主張を退け、上告人の本件標章(一)、(二)の使用は商標としての使用であるとして商標権の侵害を認めた第一審判決を相当として、商標法第三条、第三六条の法令の解釈適用を誤った。そしてこれが判決に影響を及ぼすことは明らかである。
尚、御参考までに、上告人が入手した被上告人のパンフレットを本書末尾に添付するものである。其の中で被上告人は、「ルイ・ヴィトンの歴史はある意味では、贋作との戦いの歴史ともいえる」として、被上告人の鞄類の地模様の変遷(グリトリアノン→トアル・レ イエ→トアル・ダミエ→本件標章(二)と同様のLVのイニシャルと花と星のモチーフへ)を、その都度贋作が出現した為、自社の製品と贋物との区別の必要に迫られた為と言っている。
しかし、真贋の区別をつけたいとの被上告人の意図とか必要性とかは、上告人のような業者や消費者は預かり知らないのであるから、商標としての使用か、単なる模様かについては、あくまで外観からのみ判断さるべきである。
即ち、本件標章(一)、(二)を被上告人の商品の表面全体にわたってあたかも模様のように使用しているのは、商品の模様として美しさを現しているのみなのである。
自他識別の為には、別途、商標を刻印したり、ラベルを付してこれを為すべきである。
以上
(添付書類省略)